フィリピン在住日本人から見て気になった東南アジアのニュースをピックアップ!
タイの有名ビール「ビヤシン」を製造するブンロート・ブルワリーのオーナーであるピロムパクディー家が反政府デモで揺れている。
オーナー一族である副社長の娘、ジパット・ピロムパクディー氏が野党民主党の反タクシン派デモに参加し、デモの指導者の1人として活動しているためだ。ジパット氏が外国メディアに対し「タイの地方住民は民主主義をよく理解していない」と述べたことから、タクシン派が多い東北部では同氏への反感が広がり、ブンロート・ブルワリーの事業への影響が懸念されている。
同氏の父親であり同社の副社長を務めるジュティナン氏は娘の発言に対して謝罪したが、同氏が政治活動を辞める意志はなく、問題は長期化の様相を呈している。
元の記事を読む→ 【2014年01月01日:newsclip.be】
ビヤシンというのは日本でも有名なシンハビールのことです。そのオーナー家での政治をめぐるお家騒動です。今回のお家騒動、超単純にまとめるとこういうことです。
造り酒屋のお嬢様が政治活動に足を突っ込んだ。そして反対派の連中に対して、「お前ら、バーカーw」とののしってしまった。そしたら反対派が怒って、「もうお前んとこの酒は飲んでやらねーだー!」とぶちきれてしまった。造り酒屋のご当主が政治から手を引けと諭しても娘は言うことを聞かない。あぁ、あのバカ娘が~涙
そりゃシンハビールのオーナー家としては、賛成派だろうが反対派だろうが自社のビールを飲んでくれる人はお客様なわけでして、どちらも敵に回したくないのは当然です。商売人が政治に足を突っ込むとろくなことはありません。困ったお姫様です。笑
さて、騒ぎが続いているタイの反政府デモですが、読者のみなさまの中には「タイの人は何でもめてるの?」とお思いの方も多いのでは? 実は僕もその1人でして、今回のタイの騒動のことがよく分かっていません。そこで何でもめてるのかまとめてみました。
一言で言いますと、地域対立、階層対立、この2つがセットになり、タイの人たちを二分した対立となっております。下の表をご覧ください。
赤がシンボルカラーのタクシン派ですが、元首相であるタクシン氏を支持するグループです。現在のタイの与党であり、インラック首相はタクシン元首相の妹さんです。タクシン氏が首相だった頃に、農村や地方への補助金政策、つまりばらまきを行いまして、中低所得者が支持層で、タイで貧しい地域とされる東北部で特に支持が強いです。
対する黄色チームの反タクシン派です。こちらは一言でいうと既得権益層です。タイは90年代初頭まで軍部による開発独裁が続き、経済は発展したのですが貧富の差が拡大しました。そんな時にタクシン元首相が、支持者拡大のために貧しい層に手厚い政策を行った。そうなると今までリッチだった既得権益層は面白くありません。そういった人たちが結集したのが反タクシン派です。
要するに、東北部を中心とする貧しい人たちであるタクシン派と、南部を中心とする豊かな人たちである反タクシン派、タイの国がこの2つに分かれてもめている、ということです。
ではなぜデモが起こっているのでしょうか? それは両派の支持者の規模が原因です。
現政権であるタクシン派はタクシン元首相の復権を狙っています。これは反タクシン派としては受け入れられません。反タクシン派である民主党などは、インラック首相の退陣などを求めて反政府集会を開催するなどしてタクシン派に揺さぶりをかけました。
そこでタクシン派は下院を解散し総選挙を行うことを決めました。しかし、これをやられると反タクシン派は困ります。というのも、上で説明しました通り、タクシン派は貧乏人が支持者で、反タクシン派は金持ちが支持者です。貧乏人と金持ちとどちらのほうが数が多いか?言うまでもありません。
タイは民主主義国で選挙権は国民に等しくあります。反タクシン派は金持ちグループであるため、支持者の数では貧乏人グループのタクシン派に勝てない。総選挙をやられると負けるのが目に見えているわけです。
ということで、反タクシン派が「選挙なんてダメだ~!」と言ってデモを続けており、ついには死人まで出る始末となったということであります。ものすごく単純化して説明しましたが、お分かりいただけましたでしょうか。
微笑みの国・タイで起こった国を二分する政争。すでに観光業などには深刻な影響が出ている模様です。日本企業も多数進出している国ですので、早く騒ぎが収まってくれることを祈ります。ま、恐らくいつものパターンで、最後は国王の前で寝そべって手打ちってことになるんでしょうけど。笑